第12章 StrawberryMoon
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それから2人でいつも通りお風呂に入って、夕食を食べた。時計を見やればもうとっくに0時を回っている。玄関で唐突に発情した五条のせいで、随分と寝るのが遅くなってしまった。明日は朝から可愛い生徒と出掛けるから、今日はそういう行為はなるべくしたくなかったのに。まあ結局従ってしまう自分の身体に若干うんざりしてから、なまえはようやくベッドに入る。すぐにスウェット姿の五条が滑り込んできたかと思えば、寝ようとしているなまえを組み敷いた。
「ねえ、俺まだ眠くないんだけど」
『いや、寝ろよ。悟も明日朝から仕事でしょう』
「えー、なまえが足りない」
『…はあ。もう30近いってのに、毎日元気だなほんと』
「いくつになっても元気だよ。だって奥さんがこんなに可愛いんだもん。欲情しないわけがないでしょ」
そういって、五条の細長い指が伸びてきて、なまえの髪を愛おしげに優しく撫であげた。その感覚がひどく気持ちよくて、いつもこの瞬間に、改めて幸せを感じる。
『…好きだよ、悟。だから大人しく寝て』
「好きじゃ足りない。愛してるでも足りないなぁ」
『じゃあどうすれば伝わるんだよ』
「んー」
わざとらしく考えるように斜め上を見てから、にやり、と笑うと青い瞳がこちらを見下ろした。
「もっかいする?」
『無理』
そんな事だろうと思った。全く相変わらずの彼に、なまえは背を向けるようにして布団にくるまった。ようやく退いてくれた五条はそのまま布団の中に入ってきて、なまえの背中を後ろからぎゅううと抱きしめる。
「愛おしすぎて参っちゃうよ」
『はいはい、もういいから早く寝なよ』
「冷たいなあ」
ぼそり、とそういって五条はなまえの耳を甘噛みしてから、後頭部に軽くキスをして、首に顔を埋めた。
「おやすみ、俺の可愛いなまえ」
『…おやすみ、悟』
何度愛し合っても、体を重ねても。いつだってこうしてときめかせてくれる彼はほんとうにすごいと思う。そんなことは絶対に口には出さないけれど。まだほんのり火照った体を冷ますように小さく深呼吸をしてから、愛しい人に抱き締められたままそっと瞳を閉じたのだった。