第11章 始まりの青
彼らが入学してからたった数日だというのに、担任の教師である五条が生徒達にこんな扱いをされているのは割といつものことだ。今年も早速見ることのできたそんな温かで賑やかな光景に、なまえは嬉しそうに微笑みながら口を開いた。
『また今度、時間のある時にね。君たちこれから出掛けるところだったんだろう?青春はあっという間だよ。こんなところで無駄にしていちゃいけない』
「えー、私コイツらとよりなまえさんと買い物に行きたい」
『おや、それは嬉しいね野薔薇。それじゃ次の休みには買い物にでも行こうか。真希も誘って』
「やった!でも真希ってどなた?」
『今は出払っているけれど、時期に会えるさ。君たちの先輩だ』
「お、いいねー!僕も賛成ー!それじゃ何処行こっか!」
何故か勝手に行く気になっている五条をこれでもかというくらいに野薔薇が睨みつける。
「アンタは全然誘ってないんだけど!!」
『そうだよ悟。女子会に水を差すな』
「いつか女子会って嘘ついて合コン行ってたの誰だっけ?」
五条の言葉になまえが困ったように笑えば、野薔薇がおお、と感嘆の声を漏らす。
「なまえさんやるぅー!」
『昔のことだよ。悟は本当根に持つよね』
「先生、根に持つ男は嫌われるわよ」
「別に嫌われようが離す気ないもーんもう結婚してるしー10年目だしー」
「うげ……10年ってマジか」
野薔薇の顔が更に歪んだところで、パチン、と五条は手を叩くと、「ハイ、それじゃこの辺でー」なんて言いながら三人の背中をずいずいと押した。三人は一生懸命なまえに手を振りながら、渋々歩いていった。
「僕以外じゃなまえの隣は務まらないよ」
『…はは、なんだよそれ』
遠くなっていく3つの背中を見つめながら、なまえは続けた。
『いい生徒達じゃないか、今年も』
「でしょ。僕の自慢の生徒達さ」
嬉しそうにそういう五条に、思わずなまえもつられて笑う。