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君という魔法【ハイキュー‼︎】

第1章 きみを見つけた日





梅雨前線が通り過ぎ、七月も終盤に差し掛かった頃――。


練馬区にある都立音駒高校では、毎月の恒例行事である”梟谷学園グループ男子バレーボール部合同練習”が行われる為、今回の持ち回り校である音駒の男子バレー部員達は朝から大忙しである。

そんな中、誰よりも忙しそうにぱたぱたと校内を走り回り、ある人物を探している女子マネージャーの姿があった。


『あ、こんなところにいた!ちょっと、研磨!人数分の布団用意しておいてって言ったでしょ!』


体育館の舞台裏で、甲高い声がきんきんと響く。


「…朝からうるさい…。それ、リエーフの仕事でしょ…」


顔を上げずともわかる聞き慣れた幼馴染の声に、弧爪研磨はぼそりと答えた。無論、目線は手元のゲーム機にある。

”梟谷学園グループ”と称された東京の音駒高校・梟谷学園高校、埼玉の森然高校、神奈川の生川高校は毎月、各々の高校をローテーションで周りながら合同遠征を行っている。それが今日は音駒の当番であり、教室に寝泊まりする他校生の為に布団やらを部員自ら用意しなくてはならないのだ。それが面倒だった研磨は、誰にも見つからないであろう体育館の舞台裏でこっそりゲームをしていた。しかし、幼馴染である彼女にはお見通しだったようだ。


『リエーフ一人じゃ不安だからついててあげてって言ったでしょ!他の人は別のことで忙しいの。研磨しか空いてないんだからさ、もう。ほら、ゲーム貸して』

「…え…やだ…今、いいとこだし…」

『もー!間に合わなくなるでしょうが!』


そういって、彼女は研磨の手元からひょいとゲーム機を取り上げる。
艶々の髪が胸元でさらりと揺れ、長い睫毛にびっしりと囲まれた大きな瞳をぱちぱちとさせながら、研磨を見下ろした。


「…はぁ…なまえ、ほんとうるさい…。わかったってば…」

『わかればよろしい!』


言いながらみょうじなまえは、白い歯を出しにっと笑うと、研磨に手を差し出した。
彼女は音駒高校男子バレー部唯一の女子マネージャーであり、研磨の幼馴染だ。

差し出された手を取り、のそっと起き上がった研磨はゲームを取り上げられ不機嫌そうにしている。しかし、そんな研磨の様子に慣れっこのなまえは、気にせず取り上げたゲーム機をひょいっと自身のポケットに入れた。

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