第5章 遊郭編
蕨姫。彼女は京極屋一の花魁であり、ここ吉原に潜んでいる“鬼”でもある。
今まで鬼の気配ははっきりとはしなかったが、小春が荻本屋の名の知れた花魁になった事によって姿を現した。だが、小春の目の前の姿はまさしく人間である。
『“ご冗談は良してくださいな、蕨姫さん”』
蕨姫「……そうねぇ、今は止めておくわ。アンタは口がきけないから私には追いつけないだろうけど、まぁせいぜい頑張ってね。」
『“はい、努力します。”』
こうして蕨姫は小春の横を通り過ぎて部屋を出ていった。
緊張のほぐれからなるため息を吐き、小春は着ていた着物を少し楽な物へと着替える。
荻本屋はどうやら騒がしい様で足音がこちらへ向かってきた。
「小春花魁!今日から新入りが入ったよ!これは儲かるねぇ〜」
見るととても見なれた顔があった。
彼も気がついて声を出しそうになったが、どうやら宇髄には声を出すなと言われているらしく、少し暴れている。
『“折角だから、私が荻本屋の事を教えましょう”』
そう言って連れられている者を部屋へと招き入れた。