第2章 唄柱
後ろを振り返ってみれば理性を失い人とは思えない姿に成り果てた“兄”
小春は痛みに耐えがむしゃらに走った。
『ハァ…ハァ…!!
(…もう少し行けば村が見えるはず……早く…早くしないとお兄ちゃんが……!!)』
山を抜け村が見下ろせるはずだった。
しかし、そこには荒れた畑。
倒れる人
立ち込めている血の匂い
まさに地獄絵図
小春はとうとう座り込んでしまった。諦めたのだ。目の前の絶望的な状況に。
『……』
助けをあげる声さえ出ない。
兄はあの時、か細い声で「逃げろ」と言った
しかし、そんな事をもう守れない気がしたのだ。人がだんだんと消えていく。
村からは女、子供関係なく悲鳴が聞こえては消え、消えては聞こえる。
『(…そうか……私は一人ぼっちなんだな…)』
霞み揺らぐ視界の中、大きな背中が見えてた瞬間意識を手放した