第38章 ファン1000名様突破記念 読み切り
アスマの鶴の一声で、大人しくなったガイだったが。
それにしても、いくらなんでも焼き鳥一本に執着し過ぎではないだろうか。馬鹿馬鹿しいと思う反面、少しだけ羨ましいと思った。
こんな些細な物事にも、いちいち熱くなれてしまう彼の執着心。
俺には…何か、あるだろうか。
絶対に欲しい。他人には絶対に譲れない。そんなふうに強く思える何かが。
俺は、なんとなく食べ終わった焼き鳥の串をぼーっと眺めて物思いに耽る。
「あ…」
「ん?どうした?」
「やっと俺の焼き鳥を食った事を、謝る気になったか?」
今、なんとなく気が付いてしまった。
「いや…俺いま、分かったような気がして」
その時、大将が笑顔と共に焼き上がった焼き鳥を一本。テーブルへ届けてくれた。
俺はそれを手に取って二人に見せると、話を続ける。
「あのさ、多分俺にとって女の人って…この焼き鳥となんら変わらないんだ」
「「は??」」
二人は首を傾げながら、俺が手にした焼き鳥を食い入るように見つめる。
「べつに、大して好物って訳でもない。もちろん執着もない。
でも そこにあって、そこそこお腹も空いてるから…こうやって、つい手が伸びちゃうんだよね」
言いたい事を言い終わると、手にしていたそれを パクりと口にした。
「…なるほど。なんかお前らしい考え方だな。べつに腹が満たせれば、焼き鳥でも握り飯でも構わないってか」
「そういう事」むぐむぐ
冷静に考えれば、女性にとってみれば なんとも失礼な話だ。
いてもいなくても良い。そう言ってしまったも同義なのだから。
でも、たしかにそうなのだろう。俺にとっての大切な物の中に、恋人は含まれていないという事。
「カカシが言いたい事は分かった。だがな、俺から一つだけ言わせて貰おう」
ガイが神妙な面持ちで、俺に向き直る。
「……お前が!!いま美味そうにむぐむぐ食っているそれは!!俺の焼き鳥だ!!」