第34章 ※目撃と選択と、三人と行為と
「俺があの時…」
『……っ、?』
私は 上がった息を整えながら、背中の傷を見つめたままの彼の言葉を待つ。
「エリの事を守れなかったから。
この傷は…俺が弱かった証だ」
『!!』
私は捲られた服を勢い良く元に戻すと。屈んで傷を見ていた彼の低い姿勢に合わせる。
そして目線がしっかり合ってから告げる。
『サスケ君が、自分を責める事は何も無い!そんな事言うんだったらもう見せない!』
「……、だが」
『私…サスケ君が私の為に戦ってくれた事、凄く嬉しかったよ。
勿論、私のせいで申し訳ないって気持ちもあったけど…。
あの時…わけが分からないうちに地面に転がされて。あっという間に両手拘束されて。
怖くて不安で、どうしよう。誰か助けて!って思ったら…
ぶわ!って風が吹いて、サスケ君が救世主みたいに現れたの。私嬉しくて…泣きそうになって』
桜が舞い散る中、一陣の風と共に現れたサスケ。
こんな事を言えるのは、今だからかもしれないが
その時の彼は本当に美しくて。綺麗で。
目を瞑れば、あの時の情景が寸分違わず思い起こされる。
『…私、あの時の光景きっと一生忘れない』
「…エリ。俺は…もっともっと強くなるから。
アンタが俺を、救世主みたいだって言ってくれるなら。本当に、今度こそ。そうなれるように」
『……ふふ、サスケ君。それじゃ私、また誰かに攫われそうになるって事?』
彼は、私の後ろ髪を優しく引いて。
顔を上向かせる。
「もしそうなっても。攫われる前に、今度は俺が絶対に、助ける…」
もう片方の手で、私の頬に手を添える。
『…うん、信じてる。よ』
これからキスをされると。こんなにも強く予感した事は、未だかつてなかった。
それくらいの確信を匂わせて…サスケの顔が、唇が、ゆっくりと降ってくる。
「……」
この真剣な表情から、どうして目が逸らせよう。
予感は的中して、私達は口付けを交わす。
台所で、地面に座り込んで。
でもそんな事さえも頭からは吹き飛んでしまうくらいの。甘くて優しいキス。
『……ん』
彼とのキスは、初めてではない。
きっとサスケは覚えていないだろうけど。
あの時も…この部屋だったな…。
その時。
少し離れた所から異音が聞こえた。
カラン。と何かの落下音。