第34章 ※目撃と選択と、三人と行為と
「…サスケ君は、やっぱり変わったね」
「………」
俺の変化に気付いているのは、どうやら俺だけではないようだ。
木の幹に貼り付けた、人型の的に手裏剣を投げ込んでいく。
「…優しく、なったよね」
…そう言うサクラは、俺にどんな答えを望んでいるのだろう。
“ そうだ。俺は優しくなったんだ ” とでも言って欲しいのか?
俺の放った手裏剣は、的確に急所に突き刺さる。
「サスケ君が変わったのは、きっとあの人の影響…。みんな言ってるよ!良かったって。
彼女のおかげで、サスケ君が少し幸せそうな顔をするようになったねって…」
俺の知らないところでそんな噂をされているという事実に、正直ぞっとした。実に暇な奴らだ。
頭…、眼球…、首元…、足首…。サクラの言葉を聞きながらも、俺の狙いは1ミリもズレる事は無い。
「でも…知ってるの?エリ先生は。
サスケ君の、その…復讐 の事」
「!!」
心臓を狙った俺の手裏剣は、理想とする位置から約1センチ程上に刺さった。
明らかに放つ瞬間、手元が狂ったのだ。
「お前には関係ない事だ」
「やっぱり…話してないんだね」
「それ以上、口を開くな。
サクラには…関係ない」
俺は忍具を握る手にぎゅっと力を込めた。
「…そうだよね。もし話したら…絶対に止められる!だってそういう人だもん。
復讐なんてやめて、って言うに決まってる!」
「っ、黙れ!」
俺の声が、木々に反射してこだました。
「でも!!私なら!」
「!」
サクラまでが声を荒げて、俺は少々面食らった。
彼女が俺の言葉にたて突いてくるのは珍しい。
「私なら、復讐だってなんだって手伝う。だからお願い…。私なんだってするから。サスケ君の為だったらなんだってっ、」
「サクラ、やめろ」
俺は極力優しく言った。
何故かって?俺は勝手に…
彼女に、自分の影を重ねていたから。
「お願いサスケ君っ…私を、選んでよ!」
「サクラ。それは、無理だ」
「どうし、て…私は、こんなにも好きなのに!!
あの人は、サスケ君を、選ばないよっ!!」
サクラは、それを言葉にしてから。言ってはいけない事と気付いたように口に手を当てる。
「…そんな事は、知ってる」
俺は、絶対にサクラを選ばないし。
エリは、絶対に俺を選ばない。