第34章 ※目撃と選択と、三人と行為と
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足の裏にチャクラを集中。常に一定量を放出し続ける。そうする事で水の上に立つのは容易だ。
水面上で右手に力を集中させる。
やがて チリチリと音を立てるようになった右手は、稲雷状に光を放ち始める。
もっと…もっと力を集めて、溜めて。
限界まで大きく育ったそれを、俺は目の前の滝に叩き付ける。
「……っ、は…はぁ…っ」
水の流れが変わるくらいに、変形した滝を確認しながら息を整える。
その時、背後の茂みから人の気配を感じる。
俺は視線を向ける事もせず、その代わりに威嚇の意味の手裏剣を 近くの木の幹に突き立てた。
「誰だ」
ガサっと葉や枝を掻き分ける音がして、すぐにそいつは姿を現した。
「ご、ごめんサスケ君!邪魔しちゃって…」
そこに立っていたのは、サクラだった。
「…こんなところで何してる」
ここは俺達の生活圏からそこそこ離れた、しばしば修行の場として使っている森の奥。
歩いていたらたまたまここに行き着いた。という理由は通らない。
「えっと…その、たまーにサスケ君がここで修行してるの知ってたから。今日も、もしかしたらいるかなと思って…」
サクラは不必要に顔を赤らめて言った。
なるほど、そういう事か。と俺は察する。
以前までの俺なら、嫌悪感を露わにして。問答無用でこの場から彼女を追い立てていただろう。しかし今の俺は、そこまでしない。
「…べつに、邪魔とは言ってない」
俺も、色々な経験を経て。サクラの心情が少しは理解出来るようになったのだろう。
この変化が、
果たして俺にとって良い変化なのか。逆に 悪い変化なのか…それはまだ分からない。
「サスケ君、強くなったよね。さっきの雷切も凄かった…」
サクラは、先程俺が半壊した滝を見上げて言う。
「こんなのは、まだまだだ」
雷切は、言うまでもなくカカシに教えてもらった技だ。俺が編み出した技でもなければ、まだ完璧に使い熟せているわけでもない。
こんなのでは、足りないのだ。全然。
俺にはもっと、力がいる。
大切な物を絶対に“守る”事が出来る力。
そして、
粛清すべき対象を絶対に“壊す”事が出来る力が。