第33章 帰郷と目論みと、光と闇と
『それで、その後は…』
ミナトがカカシと話をしている間、私はずっと隠れていた。
ミナトの大きな仕事机の影に。カカシからは完全に死角だったのだ。
勿論二人の会話は、そこから全て聞いていた。
「俺がエリを、元の世界に帰したって嘘付いた時のカカシの顔…
俺…っ、一生…くくっ、忘れないからっ」ぷくく
「アンタっ、ほんとに性格悪いですよ!」くっ
相変わらずカカシは、ミナトには上手い具合に翻弄されているようだ。
カカシをここまで振り回せる人間は、彼くらいしか存在しないのではないだろうか。
「あーぁ、それにしても…俺、失恋しちゃったんだなぁ。
君等あっという間に祝言とか挙げちゃいそうだし。ねぇせめて、仲人は俺にやらせてくれるよね」
ミナトが、背もたれの上に頭部を乗っけて。
今にも泣きそうな顔で天を仰いだ。
『え…?祝言って…?
私とはたけさんは恋人同士でもないのに、どうして結婚するんですか?』
「……やっぱりね…そうだよね……ま、分かってたけど」ちょっとだけ泣いていいかな
ガックリ項垂れるカカシと、
「え、何?どういう事?君ら付き合わないの!?この流れで!?
だってエリさ、言ってたじゃない?
“ 自分自身の願いを叶える為に ” って…
その為にカカシと話をするって決めたんだよね?
で、その願いっていうのが、カカシと仲直りして恋人になりたいって事だと思ってたんだけど俺…」
キラッキラの笑顔で私に詰め寄るミナト。
『私の願いは…
はたけさんと和解した上で、またあの家に帰る事…
ですけど…』
「そ…そうなんだぁ!!」パァァ
この目の前の可愛い人が、さきほどまで私とカカシを掌の上で転がしていた人と同一人物なんて…
本当に信じられない。
『だいたい、私は恋人を作る気なんてありませんから!』
「え……」
「はぁ…」
カカシとミナトがハモる。
「い、一生?」
恐る恐るといった具合に、ミナトが私の顔を覗き込む。
『いや…一生というわけじゃ、ないと思いますけど…』
「じゃぁどれくらい待てば、君はその気になるの?恋人を作ろうという気になるの?」
私はだんだん、何の話をしているのか分からなくなってきている。