第33章 帰郷と目論みと、光と闇と
「………あ」
そういえば、そうですね。と答える俺。
ミナトは呆れを通り越して、なんだか少しキレ気味だ。
「大体さカカシお前、エリの瞳の能力が発覚した途端に、怖い怖いって怯えてたじゃないか。
そんな彼女の為に…この里を捨てるのか?」
「先生、すみません。ワガママを言ってるのは自分でも分かってるんですが。
俺は、エリの元へ行きたい。
それに…俺が怖かったのは、破幻の瞳なんかじゃありませんよ。
俺が怖かったのは…エリが目の前で死にかけて…。彼女を…失うかと、思ったから」
情けない話だが、あの時の光景が今でも脳裏にこびりついて離れないのだ。
あの時俺が、アゲハの苦無をあと少し掴むのが遅れていたら?
きっと苦無は彼女の体を貫通して…高確率で死んでいた。
俺の掌の傷を見るたび、震えが止まらなくなる。
「それに…俺は正直、エリの考え方が…怖いと思ったんです」
「?」
「エリは、セツナの悲しみを軽く出来るならと、自分の命を投げ出した。
エリは、自分の事を殺す気で攻撃してきたアゲハを殺してくれるなと言った。
そんな 俺とは遠く離れ過ぎた考えを持ち、正反対の答えを導き出す彼女を…
正直怖いと思いました。
一つの命を、ここまで大切に思い、殺さずを貫き通すエリ。
たくさんの命を、奪い続けて来た俺…。
俺達はもしかしたら…絶対に相容れない存在なんじゃないかと思いました。
だから
俺は、逃げたんです。エリから」
「…なるほどね。
自分と180度違う考え方をするエリを見ているのが怖かったと。
それは、俺も分かる気がするな。
彼女は…俺達のような忍からすると綺麗過ぎる。
命の重みの捉え方がそもそも違うからね。
彼女が光なら、俺たちは闇だから」
そう。
強すぎる光を前にして、俺は目が眩んだのだ。
「…その通りです。俺とエリは、光と闇。
本来は相容れないのかもしれません。
でも俺は、今その光を失って気付いたんです。
光があるから、影が出来る。俺が存在していられる。
光…なしでは、もう俺は歩けません。
彼女に…俺が行く道を照らして欲しい。
エリなしでは、俺はもう生きてはいけないんです」