第29章 別れと髪と、湯と理性と
セツナの話したい事は大体予想がついた。
「…体の具合はどうだ」
再びベットへと腰掛けた。
『走り回れるかは微妙だけど、歩きは出来そう』
「そうか」走り回らなくてもいいだろ
セツナは、今回私を巻き込んだ事を謝りたいのではないか?と私は予想していた。
しかし彼の性格上、素直にごめんなさいをする事に照れがあるのではないだろうか。
だからこそ、言い出しにくそうにしている。
「…お前に、言いたい事がある」
『うん』
ごめんって言われたら すぐに、いいよ!って答えよう。
なんて、頭の中でシミュレーションをする。
「俺は…お前の事、
本当はブスだとは思ってねーから!」
『……うん?』
あまりにも自分の予想と違った言葉に、すぐに返答する事が出来なかった。
「初めて会った日に…、俺エリにブスだって言ったけど…そんな事思ってねえから」
『う、うん』
「あと、飯だって…あの時は不味いって言ったけど普通に美味かった、から。
色々と酷い事を言って…悪かったな」
『いや、全然…』大丈夫
そういえば、あの空き家でそんな会話をした。今の今まで全く気にしていなかったのだが…。セツナはそんな事を気に病んでいたのか。
「怒って…ないのか」
『っ、ぷ、あはは!怒ってないよ!っていうか、謝る所そこ!?
おかしっ、あはは、セツナ色々とズレて、あいたたたっ』
「大丈夫か?!」
誘拐をした事よりも。何度も喉元に刃物を突き付けた事よりも。私の体にキスマークを付けまくった事よりも。そんな些細な事に謝罪する彼が面白くて。つい笑いを堪え切れなくなってしまった。
しかし、笑う事によって体に力が入ってしまって傷が痛んだ。
『大丈夫、大丈夫…』ふぅ