第29章 別れと髪と、湯と理性と
シカマルと他愛もない話を楽しんでいると、ノックもなしに扉が開いて。セツナがすごい勢いで部屋に飛び込んでくる。
「目ぇ覚めたのか!」
『あぁセツナ、お疲れ様ー』
「…なんか、思ってたより元気そうな」軽…
ドカっとベッドの脇に腰掛けた。そして辺りをきょろきょろ見回した。
おそらくはカカシとミナトの姿を探しているのだろう。
『二人は木ノ葉に帰ったよ。やっぱり責任者が長期で里を空けるのは良くないからって』
「…そうか」
セツナは一言そう言っただけだったけれど。二人が挨拶もなしに姿を消してしまった事を、寂しく思ったのではないだろうか。
私がそう思ったタイミングでシカマルが口を開いた。
「二人とも、アンタによろしくって言ってたぜ。
木ノ葉で待ってるから、落ち着いたら顔見せて欲しいって。
それで、ずっと伝えれてなかった…墓の場所を教えるから。墓参りに行ってやって欲しいって」
それを聞いたセツナは、複雑な顔をしていた。彼の中には色々な感情があるのだろうが、でもやっぱり嬉しさの色が一番濃いような気がした。
『よかったね…セツナ』
きっと、早くシュンの墓参りに行きたいだろうなと私は思った。
「……」
セツナは、シカマルの前で仁王立ち。そして腕を組み、偉そうに見下ろして言った。
「シカマル だっけ?お前ちょっと外せ」
「偉そうだなおい」
突然の命令に、シカマルのこめかみには怒りからであろう、血管が少し浮いていた。
セツナは、私に話したい事があるのだろうか。
「…お前とエリを二人にするのは、やっぱり不安なんだよ」
シカマルは、セツナにではなく。ベッドの上の私を見て言った。
「もう、何もしねーよ」
『シカマル君、私も大丈夫だと思う。
少しだけ、二人で話をさせてくれるかな?』
「……」
シカマルは、しばらく考えた後。
私がそう言うなら仕方がないと言い残して、退室した。