第29章 別れと髪と、湯と理性と
「今回、君を巻き込んでしまった事…。本当にごめん」
ミナトとカカシが真摯な姿勢で謝罪する。
「俺と先生が残した遺恨に…エリを巻き込んでしまった…
しかも、怪我までさせて。守り切れなくて、本当にごめんね」
二人とも…そんなふうに辛らそうな表情を浮かべて。謝らないで欲しい。私はこうして今も生きているのだから。
『わ、私は大丈夫なので顔を上げて下さい!
というか、私がお礼を言わないと…
皆さん、色々と立場があるのに…私を助けに来てくれて、ありがとうございました。
私、とても嬉しかったんです。本当に、ありがとうございます』
「…エリ」
「もし、体に傷が残ったら俺が責任取るから!」
ここでいつもの軽口が出るくらいなら、ミナトは大丈夫だろう。
『っていうか、ミナトさんこんなにも里を空けて大丈夫なんですか?』
「わぁ華麗なスルー。
んー、実はあんまり大丈夫じゃないんだよ。君、三日も寝てたしね」
『え!?三日!?』
ミナトの口から知らされた衝撃の事実。聞いてしまって改めて怖くなった。
実は私の命、結構やばかったのでは…
「申し訳ないけど、俺は一足先に帰るよ。
エリは、もう少しキズが癒えたらカカシとシカマルと帰ってくるといい」
私が、はい。と返事をしようとしたら。先にカカシが口を開いた。
「先生、俺ももう出ますよ。シカマル、エリを頼むね」
「…はあ」
シカマルの気の無い返事を聞きながら、私は違和感を覚えた。
どことなく、いつものカカシらしくないような気がしたのだ。
「…そう。分かった。助かるよ。
ところで…」
ミナトの目が急に不自然に光った。
「俺、君の瞳の件忘れてないから。
こっちに帰って来たらゆっくり…聞かせてもらうつもりだから、よろしくね」
『………はぃ』
あまりの威圧感に、私にはそれ以外の返答が思いつかなかった。