第28章 真実と兄弟と、増悪と愛情と
「……やっぱりお前…馬鹿だな」
私の首に力が込められて、彼の強い力によって骨がへし折られる覚悟をした。
しかし…
いつまで経ってもその衝撃はやってこなかった。
「っ…もし仮に、アンタが兄貴の仇だったとしても…俺に、エリは…殺せなかったかもな」
『……セツナ?』
「アンタは…、俺の、光だから」
久しぶりに、彼の笑った顔を見た気がする。
いや、もしかしたら心の底からの笑顔は今初めて見ているかもしれない。
意地悪そうな犬歯を覗かせて。涙で顔をぐしゃくしゃにして。まるで少年に屈託無く笑っている。
ずっと警戒していた周りの三人の空気も、少し弛緩した気がする。
「それに俺…心の奥では分かってたのかもな。
兄貴が…自分で死んだ事」
私は、知ってた。という言葉を飲み込んだ。
だって、セツナは以前確かに言っていたから。
サスケと対峙した、あの桜並木で。
私が、自分の喉に苦無をあてがい
“ 今すぐに二人の戦いを止めなさい。じゃないと私は、ここで死んでやる ”
そう言った時。セツナは私に こう言い放った。
“ 本当にやるぞ。そういう奴だ。…コイツもな ”
と。
セツナは悟っていたのだろう。兄の死の真相を。
彼の口から出た “ コイツもな ” と言う言葉。
それはきっと、サスケの為に死のうとした私と、仲間の為に命を差し出した兄を…
私とシュンが、重なって見えたからこそ 出た言葉ではないだろうか。
でも、私は別に確かめる事はしない。
だって。今セツナは、私の目の前で笑顔を浮かべているのだから。
それよりも重要な事なんて、私には思い付かなかったから。
「すまなかった。お前の事を想ったとはいえ、俺が事実を湾曲して伝えたのは…良くなかったのかもしれないね」
「先生は一度決めた事は、まず曲げない頑固者ですからね」
「あの時カカシも賛同したじゃないか!」ひどい
先ほどまでは、ここで本気の殺し合いが行われていたとは信じられないくらい。朗らかな空気が私達を包んでいた。