第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
『あなたがセツナだと言うのなら、じゃぁ シュンという人は、一体誰…』
「お前は喋るなよ。喉が切れるぞ」
別に多少なら切れても構わないと。そういうつもりなのだろう。彼は、私の急所から刃を遠ざける事はしなかった。
セツナが答えなかったので、カカシはゆっくりと口を開いた。
彼の昔話に付き合うふりをして、隙を伺うつもりかもしれない。
「…シュンは、俺と、先生の同僚だった男だよ。
そして…セツナの実の兄だった」
だった。
その独特な言葉選びに、嫌な予感がしないはずなかった。
「説明が、違うだろーがよ。
シュンは…、兄貴は…!
アンタらが…
殺した男の名だろ」
「………」
カカシは、何も答えなかった。
セツナの目を見たまま微動だにしない。
私は思った。
カカシとミナトが、そんな事をするはずがない。敵対する国の忍ならいざ知らず。同僚を手にかけるなど…
しかし、私の予想とは真反対の言葉をカカシは吐いた。
「そう、だったな。間違いない」
『え…』
私は頭の中が真っ白になった。
その言葉の真意は。本当に、二人が手にかけた?
いや、それならカカシの今のこの表情はなんだ。
眉間はキツく寄せられて、心から辛そうな表情を浮かべているのは…
『本当…ですか?はたけさん!本当にそんな』
「本当か、だと?」
軽く当てられていた刃が、途端にキツく肌に食い込む感触がした。
『っ、!』
「やめろ!セツナ…頼む。
俺ならどうなったっていい。復讐したいなら俺を殺せばいい。
だが、頼む…エリだけは…巻き込むな」
「…おい。お前は、アイツが俺の兄貴を殺した事が信じられねーんだろ」
セツナは、殺気を放ったまま私に問う。そして否定も肯定もしない私に、こう続けた。
「話してやるよ。五年前の、あの日の事をな」