第27章 到着と生贄と、執念と偽善と
カカシとアゲハが、対峙する。
アゲハは左手で苦無を構え、右手で印を結ぶ。
カカシは右手を体の下で構えると、チリチリと音を立て電気をその手に集め始める。
カカシは、その手でアゲハの体を貫こうというのか。歪んだ愛情とはいえ、自分の事を心から愛している人を 殺すというのか。
『……っ、』
そんなのは悲し過ぎる。しかし 私の為に命をかけてくれている彼に、アゲハを殺さないで。などと私のワガママを押し付けるわけにはいかない。
「まだ雷切出せるくらいのチャクラが残ってやがるか。
やっぱり、他の奴等じゃ大した戦力にならなかったみてえだな」
いつのまにか座って観戦しているシュンは 続けて私に言った。
「頑張れ。の一言でも言ってやれよ。せっかくアンタの為に来てくれたんだろ」
『…邪魔したくない』
「邪魔…ね。アンタが、助けてだの頑張れだの 言ってくれた方が盛り上がんだけどな」
私が期待通りの声を発しない事に、白けたような顔をした彼。再び戦う二人に目を向ける。
私もカカシの方を見つめる。彼が、こんなにも真剣に戦っている姿は初めて見る。
強い事は分かっていたつもりだった。
木ノ葉に数多いる忍の中の、トップクラスの実力を持つ彼だから。
それでもカカシの強さは、私の想像の斜め上を行っていたのだ。
彼が、負ける現実などあるのだろうか。
「…はたけさん…ずっと貴方が好きだった。
戦闘の時の、まるで凍て付いた白い焔のような貴方も。里で柔らかく笑う貴方も…。
あぁ、貴方が、ついに私だけを、見てくれてる」
「………」
自らの熱い想いを紡ぐアゲハを、カカシは無言で残酷に。どんどん追い詰めていく。
カカシから距離を取った彼女は、一旦天井まで飛び上がったあと、その天井を両足で思いっきり蹴った。
そして再び距離を詰める!
私の目には、彼女の早過ぎる動きを捉える事は難しかったが。カカシの写輪眼には全てが写っているのだろう。
彼の目が、殺気で光った。