第24章 エメラルドと瞬と、酒乱と酒乱と
私は、一目散にこの空き家から出るべく駆け出していた。
懸命に地面を蹴って、自分の荷物を持って。
そして、彼の元へ再び駆け寄る。
『…飲める?』
男の頭を自らの膝に上げ。
私は自分の水筒の飲み口を、彼の口元に近付ける。
「…なに 考えて、っぅ、」
殺す。とまで言われた人間が、再び戻って来た事が信じられないといった瞳でこちらを見ている。
彼の様子を見ていて思う。
熱はあるし、流血はしているし。かなり悪い状態なのではないかと。
『いいから、とりあえず飲んで…それとも、喉乾いてない?』
かなり息が上がっており 汗もかいているので、水分を欲しているのではないかと思ったのだが。
「……、っ」
予想通り、彼は目の前に差し出された水筒の中身を一気に全て飲み干した。
そして一息ついてから言った。
「お前…何を企んでる…、どうして戻っ、っ、」
『大丈夫っ?待ってて!いま人を呼ん』
私が言い終わるより早く、
ぐるんと。世界が反転した。
「人を、呼んだら…ほんとに 殺す!」
彼が、私を組み敷いて、上に乗っていた。
『…』
「っう、ぐっ」
やはり彼にそこまで動ける力は残されていないのだろう。体の力が抜け、私の上に倒れ込んだ。
彼の体重が全部のしかかってくるのと同時に、服にべっとりとついた血が、私の服も しとどに濡らした。
『うん…分かった。何か事情があって、貴方は人に会うわけにいかない…。
じゃぁ私は、私に出来る事をしてみるよ』