第24章 エメラルドと瞬と、酒乱と酒乱と
職員室でイルカと少し話をした後、私は家路を急いだ。
いつものお店で食材をいくつか買う。
そしていつもの帰宅路。見慣れた景色だ。
私はふと足を止めた。
なぜだか、いつもは全く気にならない空き家が。今日はとてつもなく気になるのだ。
毎日通る道にある、空き家が三軒ほど連なった長屋。どうしてこれがこうも気になるのか。
いつも特に注視する事もない、ただの景色だったはずなのに。
さきほど買った物と、自分が持っていた荷物を全てその場に置いて、私はその空き家へ吸い込まれるように、玄関へと足を向ける。そして、足元を見ると…
そこには、血の跡が確かにあった。
痕跡を残すまいと、上から砂利がかけられているのだが。その証拠隠滅はかなり雑である。私にすら見つけられてしまうくらいに。
きっと、この血の主はかなり焦っていたのだろう。
おそらく、中に誰かがいるのだ。
今にも朽ちてしまいそうな扉を軽く押す。
ギィと嫌な音を立ててそれは開いた。
ここからでは、黒々と続く室内を把握する事は叶わない。
『だ…誰かいますか、』
私は震えそうになる声を、出来るだけ押さえつけ。なんとか絞り出した。
しかし、それに答える声はなかった。
そうこうしている間に、暗闇にも目が慣れる。
なんとなく室内の情景が把握出来るようになるのと同時に
彼を発見した。
『!!』
「…っ、…」は
私は思わず、その人に駆け寄った。
『大丈夫ですか?!』
彼は怪我をしていたし、苦悶の表情が浮かんでいて。明らかに他人の助けが必要だと分かったからだ。
しかし、彼はギリギリ発した掠れた声で言った。
「…消え、ろ。殺す、ぞ」