第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
私の、腰の後ろで組まれているカカシの手に。軽く力が加わる。
そのせいで私と彼の距離が、より近くなる。
なんだか恥ずかしくて、私は彼の顔を見る事が出来ない。
大人しくカカシの胸に頭を預ける。
「うん…分かってくれて、嬉しいよ。
その通りだ。ずっと答え…探してくれていたんだね…。ありがとう」
カカシの頬が、私の頭に擦り寄せられる。
頭部にその重さを感じながら、言葉を続ける。
『気付くのが遅くなってごめんなさい…
でも、はたけさんの気持ちは分かりました。
これで、少しは貴方の心に触れられたような気がします』
「俺の、心…」
そう呟いたカカシ。二人の視線がかち合う。
しかし、照れる事などなかった。なぜならカカシの瞳に、何か覚悟のような、決意のような色が見えたから。
「お願いがあるんだ。
頼むから…何があっても、死ぬなんて。もう言わないで欲しい」
『……分かっています』
彼が私の事を真剣に思い、楽しい人生を送って欲しいと。ここまで本気で考えてくれてる。
それが痛いほど分かったのだ。
もうそんな言葉は吐かない。
「俺は…俺はね、自分で自分の命を放り出す奴なんか大嫌いだよ」
『はたけさん?』
カカシの声が、あまりに細くて。震えているような気さえして。私は思わずその名を呼ぶ。
「俺の親父ね、自殺したんだ」
声など、一切出なかった。
声の代わりに、また涙が出た。