第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
しばらく二人で歩いて、いつのまにか人気のある道からは随分遠のいた。
この辺りは街灯も少なくて、人もほとんどいない。
「…残念だったね。せっかく楽しそうに働いてたのに」
『やっぱり、見に来てくれてたんですか?二日共』
「え。なにそれ、誰から聞いて」
ミナトに聞くまで、もちろん気付ける余地など私にはなかった。彼に言われて、サスケも昨日同じ建物を気にしていた事を思い出したのだ。
そこにはやはり、カカシがいてくれたのだろう。
『お仕事で、忙しいでしょうに…。ほんと…何やってるんですか』
違う、違う。こんな事が言いたいのではない!
「ほんとだよね、うん」
罰が悪そうに、苦笑いするカカシ。
『はたけさんっ』
「ん?」
『あの、さっきは…助けて頂いて、ありがとうございました…あの、私っ』
「いいよ、そんなの。俺が勝手にやった事だし」
カカシは、私の頭上まで手を持ってくるが。
全く触れずに、すぐ元の位置まで手を戻す。
彼は、必要最低限にしか私に触れない。
いつもそうだった。やむ無く触れる時は、いつだって私を助けてくれる時。
「無事で良かった」
そして その笑顔を見た時、何故だか胸が張り裂けそうになった。
『は…たけ、さん。ごめんなさい…、私、っ、ずっと貴方に謝りたかったんです。
怒らせて…、しまった事、ごめんなさ…っ』
堰を切ったようように、両目から流れ出る涙。
「な、泣かないでいいんだよ、ほら。言ったでしょ!
もう俺が折れたんだから、君が謝る必要は、ないんだよ」