第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
『女将さん。私今日は少しこの後、人に会いに行こうと思います。ですので今日の夕飯、私は外で頂きますね』
住み込み就労の待遇の中には、昼夜の賄いの項目もあったので。女将さんにその事を告げる。
「…全部言わなくてもいいんだよ。
行っておいで。お泊まりしてきても……いいんだからね!」キラキラ
『…と、言いますと?』
女将さんの下卑た笑いを見ていると。嫌な予感が私の胸を埋め尽くす。
「分かってるよ!四代目に会いに行くんだろ?さっきの2人見てたら分かるよ!それにしてもアンタ大物狙いだねぇ」
『……』
「若いって……良い事だわよねぇ…」悦
『……』悦ってらっしゃる
訂正するのも面倒だ。というか、この手のタイプの人は、こちらが何を言ったところで聞く耳を持ってくれないだろう。
「デートなら早く行きな!アンタ人一倍働いてくれてるんだから、少しくらい早上がりしてもいいからさ。
その代わり…帰ったら話聞かせておくれな」
おそらくだが…この人に話した話は、瞬く間に商店街中に広がるんだろうなぁ。
しかし、早上がりを勧めてくれたのは素直にありがたい。私は自室への階段を駆け上がる。
自分の部屋へ入るのに、ノックをする人間はまずいないだろう。
しかし、私は今猛烈に後悔している。
なぜ、部屋に入る時ノックをしなかったのか…
『な…なにしてるん、ですか』
「〜〜〜っっ」