第11章 鰹と抱擁と、仲直りと告白と
「君が、楽しそうに働いてる事が嬉しいんだろうね。
魚捌いてるエリ、良い顔してたから」
私が…楽しそうにしている事が。
嬉しい?カカシが…?
「何を不思議そうな顔してるの?気がついてなかった?
カカシはね、
君が、君自身の人生を謳歌してくれる事を
誰より望んでるよ」
私が…私の人生を。
ミナトの言葉を受けて、私は先日の カカシとの会話を思い起こす。
——エリは、
俺が死ねって言ったら死ぬの?
——私、この命は二人の為に使いたい。
『あぁ、そうか、私…』
やっと分かった。カカシが怒った原因が。
こんなにも考えないと分からないなんて。
私は、馬鹿だ。
すぐにでも謝る為に彼の元へ駆け出してしまいたい気持ちに駆られる。しかし、
私は今仕事中なのだ。中途半端な事はできない。
きっちりと今日の分の仕事を終わらせて。
出来るだけ早くカカシに会いに行こう。そして、許しがもらえるよう謝ろう。
『ミナトさん、ありがとうございます』
「ん?俺何かしたかな」
『ふふ、こっちの話です』
「…あはは。そっか」
『あと、今日のオススメは鰹です』
「うーん、君は商売上手だよね」
ミナトがありったけの鰹を買ってくれて。
その他の店頭に並ぶ魚も、なかなかの勢いで売れていった。
今日の営業も、あとはまな板と包丁の消毒。店内の掃除のみとなった。