第9章 命の使い道と、運命とプロポーズと
「いや…あんた…っ、
あの会話の内容を本気にする奴がどこにいますか!」
拳を握り込み、声を震わせて俺は叫んだ。
「そうか。カカシにとっては冗談で終わってたんだね…。だからエリと会っても気が付かなかった。俺が口寄せをした人物だと。
通りで、彼女を俺の元に連れて来てくれないはずだよ!
なんだ…てっきり俺、カカシに意地悪されてるのかと思った。
…もしくは、自分が気に入っちゃったから俺には会わせたくなかった…とか。
変に勘ぐっちゃったじゃない」あはは
「……」この人は…
本来、口寄せの術とは。
契約を交わした生物を、術者の元に呼び出す忍術だ。
しかし当然エリはミナトと契約など結んでいない。それに加えて異世界人だ。
「なんとかこっちの世界に呼べたものの、時空の関係かなんかで、時間と場所が少しズレた。ってところですか?
それにしても、本気で異世界から人間を口寄せするなんて…
先生は本当に無茶苦茶ですね」
「ん、カカシの言った通り。口寄せには成功したけど、俺の前には現れてくれなかったんだ。
で、探して探して。そしたらなんか、カカシがコソコソと自分の家に見張り立ててるって聞いたからさ!
ピーンと来てね」
『…どうして、私だったんですか』
ずっと黙って俺たちの話を聞いていた彼女が久しぶりに口を開き。疑問をミナトにぶつけた。
「…俺は、この口寄せをするにあたっていくつかの条件を決めた。
まず、
異世界人の女性である事。それに加えて、ある程度の年齢制限と、俺好みの容姿。
あとは…。
世の中全ての事に絶望し、自らの命を投げ出した人間」
なんて、残酷な言葉を吐くんだこの人は。
「いくらその条件を満たしていたからといって、突然人ひとりを別世界に口寄せなんて、ありえませんよ…
エリにだって都合があるし、向こうには両親だって友達だっている。
それに、今まで培ってきたものを突然全て奪われるんです」
「分かってるよ。だから、押し付ける気はない。
本人が望めば、向こうの世界に返す用意も出来てる。
…彼女が、望めば。だ」