第4章 ブレスレット
『ごめん、わたし、言わないといけないことが……』
勇気を振り絞ってここまで言うとお兄ちゃんはうん、とだけ頷く。
『わ、たしっ、だ、ざい、太宰さんと…っ』
上手く言えない私にお兄ちゃんは「ゆっくりでいいよ」と声をかける。
『…ごめん、言えない…言えないよ……』
言おうと思ってるのにここから先が言えない。
我慢しようと思っていたのに、涙がポロポロとあふれ出た。
「無理しないで」
お兄ちゃんは優しく、私の背中をさする。
でもちゃんと伝えないとダメなの。
私はふるふると首を横に振る。
『太宰さんとはじめて、したの…』
ぽつりと小さな声で答えた。
「はじめて、って…え?」
私が言うとお兄ちゃんは、ぽかんと口を開けた。
『えっち、しちゃった……ご、めん、ごめんなさい、私…お兄ちゃん以外と…』
言うとお兄ちゃんは、私の背中に回していた手を離して、私の肩に手を置く。
「えっ、い、いつ?」
『少し前…ご、めん、黙ってて…許して…』
「お、怒ってないよ。でもどうして…」
お兄ちゃんはすごく困惑している。やっぱり今言わなければよかったと後悔する。
『ごめん、私…お兄ちゃんに、ずっと怖いからって言ってたのに…太宰さんとは……』
ずっと怖くてお兄ちゃんとしている時は、入れていなかったのに、太宰さんとはしてしまった。
その事がすごく悲しい。お兄ちゃんはどう思っているのか分からないけど、何度も謝る。
「大丈夫、大丈夫だから」
泣かないで、とお兄ちゃんは私の零れている涙を指ですくう。