第4章 ブレスレット
太宰の胸を咄嗟に押すけれど、遅かった。
は軽く握った手を口元に当てる。
両者とも口を開かず、沈黙したままだった。
太宰の方を見ると、真剣そうな目を向けている。
どうしたら、とが考えていると入り口から「お疲れ様です!」と元気のいい声がした。
この声は賢治だ。
鼻歌を口ずさみながらオフィス向かう賢治は不穏な空気に気づいて、おもむろに口を開いて2人に声をかける。
何があったのか賢治は何も知らない。
「どうかしたんですか?」
はハッとして賢治の顔を見た。
するとは何も言わず、賢治の横を通り過ぎて探偵社事務所から出ていってしまった。
賢治は、走り去るの後ろ姿を見ながら「どうしたんでしょうか…」と力なく言った。
それに対して太宰は「さあ?」と分からないふりをした。