第3章 身近
勇気を振り絞って『やらないです』と言うと、太宰は「それは残念だ」と言って諦めた。
それからは何も無く、探偵社に向かう。
何も会話がないのは少し気まずかったが
声を掛けられても、曖昧な返事しか出来ないからそれはそれで良かった。
探偵社のビルが見えた。
もうそろそろ着く、とは安心した。
──やっと一人になれる。
階段を上がってドアを開けると、蝶番がギィ…と軋み、音を立てた。
まだ社員の数が少なく、静寂に包まれた探偵社のオフィスに響く。
は自分のデスクに向かう。
気がつけば、いつの間にか太宰の姿はなかった。
が断ったからか、美女を探して心中や入水、はたまた自殺をしに行ったのだろう。
そんなこと気にしないでは、仕事の資料を見る。