ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第19章 Cape Cod
「…つい目が勝手に探してしまうことがあるんだ、レイラと出会うずっと前から」
「何よそれ」
「俺はキミに話せていなかったことがある…聞いてくれるか?」
「……いいわ」
「俺がまだ28で長距離のドライバーをしてた頃、ある街で家出した子供2人を深夜にトラックに乗せたことがあったんだ」
「…子供?」
「ああ、どっちを見ても育ちが良さそうな子にしか見えなかったが2人はどうやら訳ありで、もう家には帰らないと言っていた。その2人はその後ロックランドのストリートキッズになっていたらしい。次に再会した時には靴磨きで生計を立てて路地裏住まいが板に付いていたよ」
「…それと黒髪の女がどう関係してくるのよ?」
「頼む、最後まで聞いてくれ。2人の内1人は男の子で、たまたま深夜に酒屋の積荷を共にやって俺たちはまたそれなりに仲良くなった。…そいつとの最後の思い出はその片割れの女の子の誕生日だ」
「…最後?」
「ああ…仕事終わりの朝、花屋に付き添ったんだけどその日も深夜から仕事だった俺を気遣って…あいつはこの先はひとりで大丈夫だと言ったんだ…それでその後に……っ、俺があの時最後まで付き添っていればこんなことには……」
「…え?」
「…っ俺は見てしまったんだ…!男に連れられ車に乗るあいつを…。すぐに追いかけたけど間に合わなかった。一瞬見えたあいつの横顔はひどく強ばっていて…きっと、悪いことを考えたヤツに捕まってしまったんだよ…」
「そんな…っ」
「それ以来、この街でそいつはもちろん…一緒にいた女の子も1度も見かけていない…その女の子は東洋の子で黒い瞳や髪がとても綺麗だったんだ。だから、つい黒髪の子を見ると今でも目で追ってしまう…隣には美しいブロンドの少年がいるんじゃないかって…」
「でも、もうずっと前のことでしょう?もしかしたらその子たちは大きくなってあなたが気付けないだけかもしれないじゃない」
「いや、気付けないはずがないよ…。その辺にいる若い子たちとは違うんだ、2人は特別…神に愛された美しさだったんだから…。だから初めて会った時から俺は危惧していたんだ…この子達が悪い大人に騙されてしまうんじゃないかと…それをわかっていたのに俺は助けられなかった!あの時彼を助けられたのは俺だけだったはずなのに…っ」