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ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH

第14章 消えない傷


《アスランside》

クリスの部屋の前に着いてジョセフがベルを鳴らした。

「はいはーい!」

ドアが開いてヒョコッと顔を出すとクリスは僕に飛び付いてきた。

「アッシュ〜!久しぶり!会いたかったよ!」

「あ……うん」

「どうしたの?もしかしてまだ体調良くなってない?さぁ入って!」


体調が悪いと言って断ったのを覚えていたのか、優しく気遣ってくれる。…今は別の意味で倒れそうだよ。

部屋に入ると、ティーセットや数種類のケーキがセッティングされていた。

「アッシュが前に美味しいって言ってた紅茶やケーキを取り寄せてもらったんだよ!」

「…ありがとう」

「これ、覚えてる?初めて俺たちが会った時のケーキ!これは一緒に洞窟探検の映画を観た時のやつで、これは…」

「……」

「って…アッシュ、大丈夫?なんかやっぱり顔色が悪いような気がするけど」


本当に僕を心配してくれているというのが分かるだけに余計辛くなってしまう。クリスはこんなにいい人なのに、僕は…。


「……クリス、」

「なに?」

「…僕に話したいことがあるんじゃない?」


この場所に長くいたくない。
かといって今居心地のいい場所なんてないけど…早く終わらせたかった。


「…えっ」

「いいよ、言って?」

正面に座るクリスの顔を見ると、彼の白い肌は首から真っ赤に染まっていた。

「アッシュ……あの、嘘…えっ?急すぎて…その俺…」

「クリス、真っ赤だよ…もう僕分かってるからさ…隠さないでいいよ」

「…っ!」

「……好き、なんでしょ?」


ユウコのことが。
…もう言わなくてもわかる。


「………っ、うん」


やっぱり、ね


僕は泣きそうになった。
僕の好きだったユウコは、僕じゃない人のことが好きで…その人もまたユウコを好きだ。
僕がなれなかった、両想い。

クリスがディノのことを愛していると言っていたのも、ここではそう言わないと生かしてもらえないからだ。
クリスは頭が良いから、男を相手に気のある態度が取れる。相手をその気にさせるためにまるで元から男を好きであるかのような態度を取っていただけだったんだ。


…本当は僕と同じ恋愛対象を持っていたのに。

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