ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第14章 消えない傷
《アスランside》
…ん…、
「……っ…ふわぁあ」
裸だったはずの体には質の良いバスローブが着せられていて、羽毛布団が掛かっていた。
まだ眠気にボーッとするものの妙に体がスッキリとしていて、不思議に思う。
僕…ここで何を…
「…っ!」
一気に頭が覚醒する。
指先で頬を撫でると、勢いよく飛んだはずのアレはすっかり拭き取られていて何の違和感もなかった。
「………目が覚めたか」
「…っ、ジョセフ?」
「パパはもうここを出られた。お前が目を覚ましたら部屋に戻るようにと言われている」
「…見た?」
「………あぁ、俺が身を整えたからな」
「そ…っか」
「どうする、もう少しここにいるか?」
「……ううん、戻るよ」
「そうか…では、いこう」
「……」
僕は、なんてことを…
罪悪感が一気に押し寄せる。
「アッシュ、この言葉がお前にとっての慰めになるか分からないが…その体の成長は本当に普通のことなんだ」
「……ユウコを考えながらすることも?」
「…?」
「僕、ディノに触られながらずっとユウコのことを考えてたんだ…ユウコの匂いや舌の感触…僕を見る目…っ…ねえ、これも普通のことなの…?」
「……あぁ、至って普通のことだよ。
…好きな人を思い浮かべるというのは」
僕の部屋の前にたどり着いた。
ジョセフがロックを解除する。
「…では」
頭にポンと手を置いてジョセフは去っていった。
「…ふぅ…」
僕は息をついて、ドアを開けた。
いつもはユウコが声を掛けてくれるのに今日は静かだ。
「………っ!」
ユウコはベッドの下に倒れていた。
僕は慌てて駆け寄る。
「…ユウコっ!?何があっ」
『……ん…』
「……え?…ね、てるの?」
なんだ…良かった。
でもどうして床なんかで寝てるのさ…?
「……よい、しょ」
ユウコの両手を肩に乗せて担ぎあげベッドに寝かせる。