ヤマネコ-ノ-ツガイ【アッシュ】BANANAFISH
第12章 遥かなる旅路
『…えっ?』
私がヒューゴを見ると、彼も頷いた。
「あぁ。ハンナは元々俺の酒屋で積荷の手伝いをしてもらってたんだ。もう少し人手が欲しいっつったら、たまたま仕事探してるヤツがいるって連れてきたのがアスラン。まあそこは偶然だったけどな。」
『…仕事、探してたって?私聞いてないよ?』
「あ…うん、ユウコには言ってなかった。」
『どうして?言ってくれたら私も一緒に働いたのに!』
「違うんだ、生活のお金じゃなくて……ユウコごめん、今はまだ内緒にさせて?お願い。来週絶対に話すから!」
『………』
「ユウコ、心配すんな。今はアスランの言うこと信じて待っといてやってくれよ。」
『…うん』
腑に落ちないが、今は呼吸を荒くして私を探してくれていた彼を信じることにした。
「お、もうこんな時間か。俺は行くぜ。じゃあなユウコ。アスラン、またあとでな。」
「うん。今日もよろしく。」
ヒューゴは片手をひらひらさせて去っていった。
アスランは私のすぐ隣に腰をおろした。
『…私、気付いたの今日なの。』
「え?」
『夜中に目が覚めてアスランがいなくて…すぐに辺りを探したんだけど見つからなかった…。』
「…心配かけて、ごめん」
『そしたらアスランとハンナの声が聞こえて、ハンナがデート…って言ってたから…』
「え?ハンナが?…聞いてなかったな。」
『ふたりで会話してたのに?』
「…もうユウコのことしか考えてなかった。早く会いたいなって。」
『…っ……』
「ってことは、今朝悲しい夢を見てたわけじゃなかったんだね?泣かせちゃったけど…そこはとりあえず良かった。」
『…うん。』
「ユウコとヒューゴこそデートしてたの?…こんなふうにベンチに座って。」
『違う!…走ってる時にぶつかって、それがヒューゴだったの。』
「ふ~ん…それを見て僕がどんな気持ちだったかわかる?」
『どんなって、』
「必死に探していたユウコが、ヒューゴに頬を触られてキスされそうになってたんだけど。」
『…あ、えっと…心配かけてごめん…』
いつの間にか形勢逆転されていて私は小さくなった。
「…僕がしたのは心配じゃないよ、嫉妬だよ。」
アスランは私の目を覗き込んでじっと見つめながらそう言った。