第1章 はじまり
主と呼ばれる男は、漆黒の髪と同じ色の瞳。色の白い肌に羽二重の黒の羽織に黒格子柄の大島紬の長着を着て、黒ぶちの眼鏡を掛けていた。
「主、おかえりなさい」
「おかえりなさい、主くん」
そう言う長谷部と燭台切に少し微笑んで頷き、同田貫の前に来ると静かに座り姿勢を正した。
「挨拶が遅れ申し訳御座いません。同田貫正国様、ようこそおいで下さいました。私がこの本丸の審神者でございます。ここでの名は全(ぜん)ですが、皆好きなように呼んでおります。同田貫様もお好きなようにお呼び下さい」
凛とした声でそう言うと、ゆっくりと頭を下げた。
「あぁ、よくわかんねぇけどよろしく頼む。けどようあんた、狐ってわりには耳もしっぽもないんだな」
あっけらかんとした声で同田貫が言うと、一瞬にして広間が静まりかえった。