第24章 “Long time no see.”
アメリアの肩を抱き、彼女を支えるようにしてK・Kは立っていた。そしてその鋭い左目はじっとクラウスに訴えかけている。
──アメリアの願いを無下にしないで頂戴、と。
「僕も、その子を連れて行く方に一票いれさせてもらうよ」
「スティーブン……」
意外なものを見るような目で、クラウスとアメリアはスティーブンを見た。
その視線に心外だな、と言いたげな顔でスティーブンは言葉を続ける。
「“イアン”なら必ず現場に姿を見せるさ。彼は──クラウス、君にご執心のようだからね」
スティーブンはザップの持っていた方のチラシを手にして、目の前でひらひらさせる。
「ダイアンズ・ダイナーでやろうとしたように、必ず君に接触を計ってくる。今回でイアンの身柄を拘束しなければ、次は無い。分かってるだろ、クラウス。俺達が追わなきゃならないのはイアンだけじゃないんだ」
「っ、分かっている」
「三日後、この場で確実にイアンを捕まえる。その為には手札の数は多いに越した事ないだろ。彼女の存在は、たとえコンマ一秒でもイアンに隙を作る事が出来るはずだ。」
「……」
手段を選んでいる暇はない。それはクラウスもよく分かっている。
私情抜きの冷静な思考で、作戦を組み立てなければならない。スティーブンの言説はおおむね正しい。
それも分かっているはずなのに、クラウスの口からはなかなかイエスの一言が出てこなかった。
「お願いです、クラウスさん。私も連れて行ってください!」
クラウスの腕にしがみつくようにして、アメリアは必死に懇願する。
瞳はうっすらと滲んでいて、ゆらゆらと揺れだしていた。
力強く握りしめられたシャツの皺が深くなっていく。
クラウスはぐっと眉根を寄せ深く息を吐いた後にようやく、君も連れて行こう、と低く絞り出した。