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届かないとしても

第4章 そんな所も好き*


「ひっ…」

「む、無理無理無理無理です先輩!」

覚悟を決めて見始めたホラー映画。
映画館だから大声をあげるわけにもいかず、小声で先輩に助けを求める。

「大丈夫ですよ」

「いやだから無理なんですって!」

「グァァァァァァァ」

「あー!あー!やめてやめて!」

スクリーンから悲鳴やうめき声が聞こえてくる。


「せ、先輩、腕掴んでも良いですか…」

「……強く掴まないでくださいよ」

「はい…わかってま…」

「うわっああああああ」

「言って早々に強く握らないでください」

「だ、だって怖いんですもん…」






それから数十分。やっと終わった。正直何も覚えていない。
覚えていたとしても怖くて眠れなくなるから覚えていなくていいのだけど。

「は~、怖かった…」

「あんなに怖がるなんてよっぽどですね」

「だから苦手って言ってるじゃないですか」

「そうですね、今回は意地悪が過ぎました」

まあいいや。先輩の隣で見れたし。いつもは私が先輩を見上げてるだけだもんね。

「先輩!お腹すきました!お昼食べましょ」

「はい、どこで食べますか」

「えっと…」












「先輩今日は楽しかったです!」

「なら良かったです。それと条件、忘れてないですよね」

「……覚えてますよ。」

「そうですか」

あ、もう駅だ。先輩に駅まで送ってもらったけどもうさよならなのか。

「じゃあ、先輩今日はありがとうございました。また学校で…って教室行けないんで会えたらですけど」

「何言ってるんですか」

「え?」

「もう暗くなってきてるのに1人で帰らせるわけないでしょう」

「家まで送りますよ」
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