第2章 任務
「部下を呼ぶから一寸待ってろ」
通話を掛け、部下に指示を出している中也を横目に目の前の美しい噴水を眺める。
「おし、行くぞ」
「まだ買う物あるのね」
噴水から視線を中也に移動させる。
「あァ。手前ェの服だ」
「____は?いや、え?」
「手前服余り持ってないんだろ?俺が買ってやるから来い」
「いやいやいやいや、自分で買うから」
「るせェ、置いてくぞ」
「ま、待って」
中也を追い掛け、公園を出る。
何故、私の服を買うと?
同情____?服を三着しか持ってない私への同情なの?
「此処で善いか?」
相棒にそんな同情されると、さすがにちょっとキツい…
「おい手前ェ聞いてんのか」
「え、何?」
「此の店で善いかって聞いてんだよ」
前を見ると、有名な高級ブランドの店舗だった。
「………私そんなにお金持ってない」
ついこの間まで、家賃と食費だけで手一杯の生活だったのだ。
幹部に就任したのも最近、家賃免除されたのも最近。
まだ給料は入らないし____
「だから俺が買うって言ってんだろうが」
「いや、大丈夫です。もっと別の、庶民のブランド行こう?」
私の懇願を無視して、中也は店舗に入ってしまう。
本当に入っちゃうの?
かなり躊躇ったが、ここでウロウロしていても仕方が無いので腹を括って店舗に入る。