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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 いくら速く走ろうとしても、力を入れた足がずぶと雪にはまって結局速くならない。水を吸っているため、やはり余計に厄介すぎる。
(くそぉ雪め…!! 駄目だ、甲冑も邪魔すぎる!)
 三人はすでにはるか前方で交戦している。小十郎に至っては刀を納め、素手で戦っている始末だ。三人とも、表情は見えないがどこか楽しそうに見える。
(だああぁぁぁ面倒くさ…!)
 いっそのことここで傍観させてもらおうかと諦めかけた時、

「……何す…だっ! 離し……れっ!」
 何処かから、小さい子供のような叫びが聞こえた。
 丘の下、ここから真後ろの方向には森がある。もしやそこではないか?もしも豊臣に襲われているのであれば、一刻も早く助けなければならない。
 雄司はぐるりと向きを変え、今来た後を戻りはじめた。元来た場所を踏み戻るのみならば、さほど苦にはならない。幹部三人を差し置いて出しゃばりに行くのもどうかとは思われたが、呼びに行くまでの方がかなりの時間を要する。いざ行ったときにすでに殺されてしまっていては、もう遅いのだ。

 麓までたどり着くと、確かにどうやらざわめきが聞こえる。それはやはり敵か、それとも味方か。
 森に入ると、雪は多いが固まっているためあまり苦労しなかった。滑る事に気をつけてさえいればどうという事は無い。それほど経たずに、光の射す開けた場所が見えてきた。やはり人が集まっている。手頃な茂みに身を隠した。初めてであるため震えそうになるが、かたく拳を握って耐えた。
恐る恐る伺うと、広場を埋めるその色は――――――――――黒。
(豊臣が… まだ…!)
 その中に、目立って淡い色が見え隠れする。白か…空色あたりだろうか。盛んに動いている。あれが悲鳴の主だろうか。目を凝らしてじっと見ると、一風変わった服装の少女らしい。武装したようにも見えるのは気のせいだろうか?さらに、先程の叫びのせいか、猿ぐつわも噛まされているようだ。拘束されているのはどうやら手首。木にくくりつけられている。
(どうしよ…? 出るのか? 出て…どうなる? …まだ人も殺めた事の無い俺が出て行ったって、無駄死に以外の何物でも無いじゃないか!)
 出るか、出まいか。うかうかしていると取り返しのつかない事になる!
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