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青一点【BSR】

第2章 初陣の日


 明らかに聞き覚えのある声である。雄司は振り向いた。逆光だが、よくよく見ずとも誰だかわかる。
「農民が相手だ、下手に真剣持たせて無闇に殺されても困るのはこっちだ」
「…小十郎様」
「おー、こじゅ兄!」
「俺の分の政務が予想以上に早く終わっちまったんでな… 豊臣がいるって聞いたから加勢に、な」
「しかし景綱(※小十郎の名は本来は景綱です)、豊臣はほぼもういないと思われますよ」
 小十郎は呆れたように嘆息した。
「そりゃお前らがあらかた殺しちまったからだろうが… ったく、俺の分も残しとけとは言わねえが、一人くらいは捕縛して情報聞き出すくらいしろ」
「へーへー」
 そんな極々普通の会話…というか無駄話をしている間に、丘の反対側から続々と一揆の男衆が湧き出てきている。負ける気は無いが、先手を取られても厄介だ。
「あれだけ殺されてもなおあんな人数がいるとは… 連合軍でしょうかね?」
「成実様、小十郎様、綱元様、」
「わーかってるって。んじゃぁ、ちょいと懲らしめに行きますか?」
「成実、峰打ちだからな」
「だからわかってるー!」
「まさかこの三人がこんな所で揃うとは思いませんでしたよ」
「………」
「相手が弱すぎるが、な」
「いやー楽しみだねぇ」
「何人伸せるか試します?」
「~~~っだから来ますって!こっちから行かないんですかっ」
 自分が部下であるとはいえ、たしなめられてもしゃべり続ける将だとは。しかも小十郎までもがである。このままでは止まらない気がしたのだ。出しゃばった行為だとは解っているが。
「はいはい、んじゃ真面目に行くか!」
「「応」」
 そして三人は不意に真顔になり、走りはじめる。雄司は少し出遅れてしまった。慌てて追いかけるが、足元は雪。とても走りづらい。しかし三人は、その障害など無いかのように走っていく。
「あのッ…」

「ひゃ―――――――ッはァ―――――――――――――!!!!!」

 成実が、心から楽しいとばかりに叫んだ。
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