第1章 プロローグ
記憶は朧気だった。
外を見ると寒い冬は終わり桜の花が満開だったことから長い間眠っていいたことに気づく。
「まったく君は…俺の寿命をどんだけ削れば気が済むの?」
「万理さん」
目が覚めてすぐボロボロ泣きながら怒鳴った万理さんはようやくいつもの調子を取り戻し、説教を始めるも覇気がない。
憔悴しているようにも見えた。
「万理さん」
「わっ…」
横になった状態で万理さんの手を掴み自分の元に引き寄せる。
「あー万理さんの匂いだ…ぬくぬく」
「俺は怒っているんだけど」
「はい」
嬉しそうに笑いながら返事をする私は万理さんを抱きしめてようやく告げた。
「ただいま万理さん」
「馬鹿…俺、すごく心配したんだよ」
「はい」
「病院に運ばれて…もう危ないって言われて」
泣きたくないのに涙が流れてしまう万理は情けないやら悔しいやら色んな気持ちが交差した。
「なんであんな場所にいたんだよ…何で連絡してくれないんだよって…俺が誘わなかったら君はこんな目に合わなかったんじゃないかって」
「それは違いますよ。私の運が悪かっただけ」
「…聞きたくないそんな言葉」
たまたま運が悪かっただけでがもしれないけど、選んだのは私なので自業自得と言えるだろう。
もう笑うことができなかったかもしれない。
「でも私って強運ですよね?生きていたんだし」
「それは強運ではなく悪運って言うんだよ…本当に馬鹿!!」
未だに怒っているのか泣いているのか解らない万理さんに困り果てるのだった
しかしその翌日にもっと厄介な事になる事を私は知らなかった。