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未完成な僕ら

第1章 プロローグ






春の優しい風が吹く。
ひらりと舞うのは薄紅色の桜の花びら。


――早く目覚めてと桜が告げれいるようだった。



機械音が一定のリズムを刻む中光が差し込んで行く。




「マナちゃん」


低い声が響く。


「今日はとてもいい天気だよ」

温かい日差しとヒラヒラ舞う桜の花びらと一緒に舞う優しくて綺麗なあの人の声だった。


私は冷たく寒いあの日にあの人との約束を破ってしまった。



クリスマスイヴを一緒に過ごそうね?って約束をしたのに私はその約束を果たし事はできなかった。

それどころか私は、大切な場所を――。


――ごめんなさい万理さん。

私は…


私は!





ピクッ!!


「っ!!」



「マナちゃん!?」


貴方を傷つけてしまった。

そのことが申し訳なくて、どうしようもないと思った瞬間、腕に力が入った。


「しっかりしてマナちゃん!!」


「‥‥っ!!」


ドクン!!

声が出ない。
体も自由が利かなかった。

でも動かないと。

声を!




「…り…さ…」


「マナちゃん!!」


視界がにじむ。
涙で見えなくなってしまいそうだった。



それでもかろうじて愛しい人の声を呼ぶことができた。


そしてしばらくして、医師が病室に呼ばれた。






「あんな状態から目覚めるなんて……もう、絶望的だったのに!奇跡だ!!」


まだぼやける意識の中、意識は朦朧としている。
私の体が全く動かず全身激痛が走り自由が利かなかった。

「…え?」


何故自分が病室にいるとか、体が動かないとかなんてこの際どうでもよかった。


「ぐっ…」

「無茶です!!まだ動いては!!」


激痛が走るも私はなんとか動こうともがくも傍にいた万理さんはすごく怒っていた。

「うっ…ふっ…ばかやろ…この馬鹿野郎!!」



泣いている万理さんに手を伸ばすも涙を拭うことはできなかった。

それどころか万理さんは泣き続けた。
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