第3章 第二部三年越しの思い
私にとってリンリンは心から信頼できる人だった。
まどかちゃんとカオルちゃん以外で、ここまで信頼できる人はいないと思うぐらい。
「リンリンは私が前に勤めていた芸能事務所のまねーじゃーをしていた人なんです」
「君が一時務めていた事務所だね?事故に合う直前まで」
「はい、まだできてま無しで小さな事務所で…リンリンは社長さんの弟さんでした」
少し控えめで兄を尊敬する人だった。
社長であるあの人は性格がお世辞にも良いとは言えない人だったけどリンリンはとっても優しくて素敵な人だった。
「でも、その人は…一度だって君に会いに来なかったじゃないか」
「来ないんじゃないんです。これ無いですよ」
「え?」
もしかしたら私が事故に合った事も知らない可能性が高い。
「まどかちゃんが事故の事は出来るだけシャットアウトしましたし…事故後、接触をしないようにするように言われたんです。彼が知らない可能性が高いです」
もし私が事故に合って、病院も知っていたなら。
「知っていたら一番に会いに来てくれる。そんな人だから」
「マナ…」
あの人の事は良く知っている。
一緒に過ごした時間は短くても同じ釜の飯を食べた仲間だもん。
「私はあの人の期待を裏切った。約束を破ったんです」
「それは…」
「理由はどうあれ、私は彼に合う資格はない。今の私じゃ会うこともできない」
きっとリンリンは優しく頭を撫でながら言うんだろうな。
『君は悪くないよ』
困った表情言うんだろう。
そして心配させたことを叱って私を許してくれる。
「今あっても迷惑をかけるし、こんな状態で会えばどうなるか。彼等にも迷惑をかける」
「彼等って…プロデュースしていたアイドル?」
「はい」
そういえば万理さんには言ってなかった気がする。
「何所の事務所?」
「岡崎芸能プロダクションです」
「は?」
ガシャン!
湯呑を床に落とし、割れる音が響いた。