第3章 青色~青峰~
小学校の頃から、私は…今の彼風に言えば鈍くさくて。
どうってことのない平地でも、何かの拍子に躓いたりしてた。
数は減っても、今もそれはなくなってない。
それをまさか、この人は覚えてた…なんて、あるのかな……。
(そんなこと、あるわけないか……)
それきりおとなしくなった私を、青峰くんは何も言わずに離してくれた。
そうして、そのままドアに手を伸ばす。
それをぼんやり見てた私を、彼が振り返った。
「何ぼーっとしてんだよ。美術室に行くんだろ」
「え……」
「置いてくぞ」
ぷいって顔を反らして行ってしまう青峰くんに、私は慌ててしまった。
「え…ちょっ…まっ」
急いで階段を下りる私に、青峰くんが振り返らないまま、
「またコケんなよ」
「だ、だれがっ!」
馬鹿にしないでよ!って私はムキになったけど、青峰くんの声に、少しだけど笑いが混ざってるのが分かった。
何で…こんなことになってるんだろ。
私、青峰くんと…喋ってる……。
(何か…変なの……)
何、これ?
そんな風にも思ったけど、とにかくも、青峰くんを捜しに来たのは私のはずなのに、いつの間にか立場は逆転してて。
私は青峰くんの後について行くことになった。
ただし。
「おい、美術室って、何処だ?」
美術室に一度も行ったことのない青峰くんが道に迷うまで…だったけど。