第3章 青色~青峰~
(今、何て言いましたか、先生?)
思わずそう言いたくなるくらいに、私は目を剥いた。
選択授業は3クラス合同の混成クラスだから、選択授業内だけの日直(っていう名目の、早い話が雑用係だけど)が、通常クラスとは別ローテーションで設定される。
で、今日は確かに私が日直なわけだけど。
(今までは一度もそんなこと言わなかったのに)
何で今日に限って捜して来てとか、そういう展開?
それでも一応、指名されてしまった私はその場に立ち上がるしかなくて。
そうしたら、先生は女らしい綺麗な笑顔で、申し訳なさそうに私に笑いかけた。
「ごめんなさいね。△△さん。でも青峰くんは入学以来、一度も選択授業に出席していないのよ。このままじゃ、さすがにね」
「はあ……」
それは確かに(幾ら選択授業の回数が少なくたって)、マズそうだな、とは思う。
私もそう思います、先生。
でも、どうして今日なんですか!
って、言いたいけど…言えない……。
それに大体、青峰くんの居場所なんて、私に分かるわけないし。
すると先生は、それを見越したように苦笑した。
「青峰くんのクラスの教室とか、保健室とか、思い当たるところを幾つか見てみてくれる?それで見つからなければ、仕方がないわ」
目安として、10分くらい。
それくらいで見切りをつけて戻って来るように、って先生は言ってくれるけど。
(絶対、見つけられない自信があるよ。私)
けど先生も困ってるし、今日の日直は私だし。
10分くらいなら、ま、良いかな…って思っちゃったのは、デッサンにちょっと挫けかけてたから…なのは内緒。
「それじゃ、ちょっと見に行ってみます」
「ええ、お願いね」
「はい」
どうせ見つかりっこないし、ちょっとした休憩をもらった気分で、私は教室を出ようとした、途端、
「屋上に行ってみて?(ひそっ)」
「え?」
潜めた声に振り返ったら、そこには知らない女の子が座ってた。
長いピンクの髪をした、可愛い印象の女の子。
だけど、私はこの子を知らない。
ここにいるってことは、同じ選択授業を取ってるはずだけど、今まで喋ったこともなかった。
(誰……?)
そう思ったけど、訊ねる間もなく彼女は。
「頑張って」
そう言って手を振ると、デッサンに戻ってしまって、私は部屋を出るしかなかった。