第2章 水色~黒子~
「リ…、リコ、先輩!」
『「リコ」でも「リコ先輩」でも、何なら「リコ姉」とかでも良いわよ』
私が先輩達から『○○』って呼ばれるようになったあの時、カントクから言われた…というか、さり気なく(?)オーダーされた、それは私からの、カントクの呼び名…だった。
まあ、今の今まで、できなかったんだけど。
だって恥ずかしいっていうのもあるけど、カントクは先輩だし、やっぱり呼びにくいっていうのもあったし。
だけど……。
(言っちゃった)
でも何か居心地が悪くて、私が目を泳がせてたら。
「いやーん!○○、もう一回!」
「ぅええええっ!?」
抱きつかれて、そんなことに。
「カ、カントク?」
「違うでしょー!」
「リ、リコ先輩……」
「そう、それよー!本当はリコ姉が理想だったけど、最初から多くは求めないわ」
「は、はあ……」
そんなわけで、カントク…もとい、リコ先輩に、私はしばらく強烈ハグを受ける羽目になったんだけど、お陰で(?)、私とテツくんのことも(お互いの呼び方も含めて)、リコ先輩はあっさり認めてくれた。
ただし。
「部活中のイチャつきは禁止よ?彼女ナシ男どもの目に毒ですからね」
しっかり釘は刺されたけど。
「し、しないですから、そんなこと……っ」
人前でイチャつくとか、するわけないし!
そうだよね、って同意を求めるようにテツくんを見た私だったけど。
「それは…仕方ないですね」
「……………!?」
仕方ない?
今、仕方ないって、テツくん、言った?
ここはさらっと同意してくれるかな、とか思ってたんだけど。
テツくんは、私の知ってる今までの彼と基本、変わらない…んだけど、何か、時々ちょっと違うというか、知らなかった一面が垣間見えて、その度に、すごくどきどき…する。
付き合うようになったのって、まだ昨日からなのに、今からこんなで、私…持つのかな。
それに私ばっかり、どきどきして…ずるいよ、テツくん……。
って思っちゃうのは、私だけかな。