第2章 水色~黒子~
「あ、△△さ……」
後ろから声が聞こえてきたけど。
「すみません、返却お願いします」
タイミング良く(?)やって来た生徒に、黒子くんが振り返るのが見える。
私はそのままカウンター業務を黒子くんに任せて、自分は返却された本を棚に戻して回った。
今更だけど、図書室の中を見渡してみると、今返却に来た人を除けば、ここには私と黒子くんしかいない。
元々それほど利用者が多いわけじゃないけど、利用者ゼロなんて珍しい。
お陰で、ついさっきまでの色々が誰にも見られてなくて(返却に来た人は全部終わってから来たから問題ないし)、私はほっとした。
その後も私は本を棚に戻したり、図書データをデータベースに登録したり、更新したり、わざと細々とした雑用をこなすことで、カウンターに落ち着かないようにしていた。
時々、黒子くんの視線を感じるような気がしたけど、彼の顔が何となく見れなくて、私は気が付かない振りをして。
残りの時間をカウンターから離れた場所にあるパソコンに向かって、入力作業をしていた。
これはこれで気まずいし、次の当番の時どうしようとか思うけど……。
だからって、どうしたら良いのか分からない私は、やっぱりまだ色々駄目ってことなのかな。
あんまり考え込まないように作業に集中していたら(ついムキになっていつもより頑張って入力してしまった)、カウンターから黒子くんの声がした。
「△△さん。そろそろ時間です」
「え…、あ!」
時計を見れば、図書室を閉める時間だ。
「ご、ごめんね。すぐ片付けるから」
私が慌ててパソコンの電源を落としている間に、黒子くんは図書室を閉める準備をしてくれながら、ゆっくりこっちに近づいてきた。