第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
シャンクスが放った僅かな覇気は、近くにいた山賊達を気絶させるには十分だった。
女の子がいるため力をかなり抑えたお陰か、女の子は未だにキラキラした視線をこちらへ送ってくる。
シャンクスは女の子からの視線の意味が分からず、脳内に多くの疑問符を浮かべた。
「て、てめぇ!!何しやがる!!」
突然倒れた仲間達を見て、他の山賊達がシャンクスを襲ってくる。
だがそれも、いとも簡単に返り討ちにあってしまった。
その様子に流石の山賊の頭も、表情が険しくなっていく。
仕舞には仲間から女の子をひったくると、その喉元にナイフを突きつけた。
何ともベタなその展開に、シャンクスはどうしたものかと暫し迷った。
だが、女の子の首から僅かに血が流れるのが視界に入り、考えている時間もなかった。
女の子には申し訳ないが、距離もそれなりに離れているため、覇気の威力を上げて助けるしかないだろう。
子供を巻き込んで使ったことなかったから、正直死なないか心配だった。
……だけど、どうしてだろうか。彼女なら大丈夫だろうと、シャンクスは無意識にそう思っていた。
「…っ!?」
そして次々と残っていた山賊達が倒れていく。
最後に何とか踏ん張っていた頭も、あっけなく倒れた。
……おいおい、まじかよ
全ての山賊が倒れた状況の中で、変わらないものが1つだけあった。
それは、女の子の視線だった。
男から解放された彼女は、キラキラとした視線で、未だに立ち続けている。
死なないと思ってはいたが、彼女だけ意識を保っているとは予想してなかった。
彼女も他の山賊と同様の覇気を浴びた筈だ。
それなのに、彼女はただ嬉しそうにシャンクスを見ているだけだった。
エメラルドグリーンの、海のような美しい瞳。
シャンクスは彼女のその綺麗な瞳から、暫く視線を外せないでいた。