第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
次の日。
決闘は、ここから一番近い無人島で行われることになった。
鎖を外されたユーリは、漸く外の空気を吸えたことに喜び船から島に飛び降りる。
一瞬このまま逃げるのではと思ったが、彼女は律儀にシャンクスが降りてくるのを待っていた。
愛用の剣を片手に、砂浜に何か絵を描いている。
違う、剣の使い方はそうじゃない。
ベンはシャンクスの後に続き、内心そう突っ込んでいた。
因みにこの珍しい決闘を見る為か、クルー達も船からその様子を伺っている。
シャンクスの命令で船から降りれるのはベンだけだが、こんなレアな状況は中々ないためか、結構な人が甲板に立っていた。
そしてベンは、勝敗を決めるために巻き込まれた。
なぜだろう、ここ数日で彼の白髪の数が増えたような気がする。
「では、よろしくお願いします」
「…あぁ、何時でもいいぜ」
そして砂浜で対面する二人。
ユーリの足元に書かれている謎な絵を見ると、とても今から戦う雰囲気ではないが、彼女はいたって大真面目だった。
剣を静かに構える彼女に、一切の隙はない。
もちろんそれはシャンクスも同じなのだが。
因みにシャンクスに至っては、まだ剣すら抜いていない。
…流石に彼からすれば、こんな戦いは余裕なのか。
表情には出さないよう、ユーリはため息を吐いた。
波の音だけが響いているその空間。
それは次第に張り詰めたものに変わっていく。
二人の覇気が、静かに衝突していった。
……へぇ、これは…
ユーリの覇気を感じて何かを思ったのか、シャンクスはその場から動いた。
その瞬間、彼女の姿が消え、一瞬にしてシャンクスがいた場所に剣を突き立てる。
浜辺に突き立てられた剣先は、大地を裂き、その衝動で海を割った。
…おいおい、まじかよ…
その光景を見ていたクルー達がざわついている。
そんな中でシャンクスだけは、楽しそうに笑みを浮かべていた。