第1章 前編 赤髪の皇帝 白髪の少女
二人の間で、暫くにらみ合いが続く。
後悔したところで今更どうすることもできない。
ならば、いかにして被害を少なく終わらせるか考えるしかなかった。
「いや、彼は私が叫んでいたら心配して来てくれたんですよ」
ベンが今後の展開に予測を立てていると、思わぬ人物から弁解の言葉が来た。
それが良いのか悪いのかは分からないが。
「なんだ?具合でも悪いのか?」
「…そうですね。体調不良の元凶が目の前にいますので」
ユーリの言葉に、特に心配した様子もなく歩みを進める彼。
そしてユーリのこの態度。
彼女は自ら地雷を踏んでいくスタイルなのか?
どう足掻いても逃げれないこの状況で、よく強気で出れるな。
ベンはそんな二人のやり取りを、どこか現実逃避しながら見ていた。
そしてシャンクスがベンの横を通り過ぎる時、この部屋から出て行くように言われる。
その言葉は正直ありがたかったが、果たして彼女をこのまま置いて行っていいものだろうか。
「いや、ちょっと待て。彼がいなくなるとまともに話が出来なくなる」
「そうか?見られてもいいなら別に構わねぇけど」
「…何が見られてもいいのかは聞かないでおこう。とりあえず私の話を聞け!」
繋がれた鎖をガチャガチャ言わせながら、憤慨する彼女。
憤慨はしているが、身の危険は感じているのかシャンクスとの一定の距離を保ち続ける。
といっても、たいして広くないこの部屋では限界があるが。
「ベン、何時までそこにいるんだ?おれは出て行けと言ったよな?」
「ベン、ちょっと待って。今いなくなって貰ったら困る」
そして何時の間にか2人の間に板挟みになっているベン。
ユーリがベンを盾にするもんだから、彼の覇気をもろに浴びることになった。
…いやマジで、勘弁してくれ。
「悪いが、おれの頭はこっちだからな。諦めてくれ」
そしてベンは、これ以上状況を悪化させないために、ユーリを差し出すことにした。
差し出すと言っても、この部屋から出て行くだけだが。
そしてベンのその言葉に、どこか絶望というか呆れた表情をするユーリ。
何だかんだで、彼女の怒りも限界にきてそうだった。