第7章 秘密の花園/前編
城下町を出て森の中をしばらく進むと一本のブナの巨木が目に付いた。
その木に猿にも劣らない速さで登って行き、てっぺん付近の枝に立って周囲を見渡す。
「ん?あれは…?」
鬱蒼とした森の中に小さな泉みたいなものが見える。
…?
なんだろうな。
ごく自然な光景のはずなのに、妙な違和感を感じる。
気になった俺は木から降りてその泉の方へと向かった。
………
………
「すごい岩だ。こんなもの、一体誰が……」
近くまで来てみると違和感はさらに大きくなった。
肝心の泉は3〜4メートルほどの高さまで積み上げられた岩に守られるようにグルリと囲まれていて、全く見えない。
高い位置から見たから気付いたものの地上を歩いてるだけじゃ泉の存在は分からなかった。
まるで意図的に隠されているみたいだ。
好奇心に駆られ、岩づたいに歩いてみることにした。
すると…
「あれ」
岩の一部分が くり抜かれ、人がひとり通れるくらいのトンネルになってるのを発見する。
岩に纏わりついた植物のツルがカーテンのような役割をしていて、その入り口は巧妙に隠されていた。
どうやらここから中に入れそうだ。
でもこの入り口は… 普通は気付かないだろうな。
予感は確信に変わりつつあったけど、
木の上から見た泉をどうしても近くで見てみたくて、ツルを左右に避けながらトンネルをくぐった。