第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
結局、愛聖の相手が誰なのか最後まで聞けなかったな。
だけど、あんなに不安そうな顔してまで俺に打ち明けようとしてくれてたなんて···
ちょっと待てよ?
そもそも愛聖は、なんで最初に俺に?
いや、正確には最初に話していたのは社長にだけど。
こんな大事な話って、俺よりも誰が分からずじまいではあるけど本人に話すべきなんじゃないのか?
本人···その部分に、何か引っ掛かる。
そう言えば···2ヶ月くらい前の、あの夜。
愛聖が主演を務めた映画がクランクアップしたって聞いて、お疲れ様って話してて。
でもその時に掛かってきた千からの電話で、急に千とケンカになって泣き出して、慰めてて。
次の日は俺も休みだったし、愛聖もオフだって聞いて···じゃあ俺の部屋で飲んで元気になれ!って盛り上がったんだよな。
お互いに昔の話とかして、懐かしんだり、笑ったりして···どんどん飲んで、愛聖がすぐ潰れて。
それでベッドに運んで···あ、あれ?
その後って、どうしたっけ?
そう言えば目が覚めた時はふたりとも同じベッドで寝てた。
で、朝ごはん作るかってベッドから出た時に、俺···何も着てなかった···
慌ててベッドサイドを見回したら、そこに脱ぎ捨てられた俺達の服が落ちてて更に焦って。
まさかね···ってそっとタオルケット捲ったら···愛聖も同じような格好で。
そのせいで愛聖も目を覚まして、なんか様子が変だったんだよな。
昨夜の事は忘れるから···とか?
・・・?!
「···えぇっ?!ちょっ、待っ···えぇっ?!」
も、もしかして···というか!
もしかしなくても!!
···父親云々って、俺か?!
こうしちゃいられない!!
愛聖とちゃんと話して確認しないと!
社長が送って行ったんだから、もう寮には着いてるはずだ。
···念の為、居場所は確認しておくか。
事務所のデスクに戻り、スマホから寮にいそうなメンバーに電話を入れた。
「もしもし三月くん?大神だけど···」