第1章 秘密のキスはアナタと ( 大神万理 ・2018生誕 )
いったい誰が来てるんだ?
こうまでして壮五くんや大和くんにまで人払いをさせる程の···力のある人間···
「大和くん···部屋の中には、誰がいるの」
大「答えられないなぁ···それに、ヒントなら言ったんだから」
俺が知ってる、今をときめく···?
もしかして···
「千が、いるんだね?」
大「···さぁ?」
大和くんのこの態度が、本心なのか演技なのか分からない。
けど、今の反応で中にいるのは千だって事は想像が付く。
「大和くん、ごめん」
頑なにドアの前から退かない大和くんを無理やり横にずらし、ドアを開けた。
「やっぱり、千だったか」
千「やぁ。有能事務員さんは、こんな所でおサボり?」
愛聖の隣に座りながら顔だけを俺に向け···営業スマイルを貼り付ける千に、愛聖も困惑している。
「千こそ、天下のRe:valeがこんな所でおサボりか?」
千「違うよ。見て分からない?」
「何が?」
千「僕はいま、愛聖に結婚を申し込んでいるところ」
け···っこん?
千「あ、オシャレに言えば、プロポーズか。ね、愛聖?」
千に肩を抱き寄せられ、曖昧な笑顔を見せる愛聖は···困っているようにも見えて。
「···なんの、為に?」
そう言うのが精一杯だった。
千「なんの為って、僕のこれからの人生を彩る為だろ?だから僕は、迷うことなく愛聖を選んだ···それだけの事だよ」
「それだけのって、だって愛聖は···」
千「あぁ、別にそんなの関係ない。愛聖が命を分けた子供なら僕は愛していける自信はあるから···例えそれが、誰の子供であっても、ね」
···ん?
なんかおかしい。
あの千が···だろ?
人を寄せ付けないオーラ全開に出せる、千が···だよな?
そっとドアの外に目をやれば、大和くんの肩が微かに揺れている。
って事は、この一連の流れはもしかして。
······ドッキリ?
愛聖と千、それに大和くんも壮五くんも···グル?
···社長も?
なんてスケールの大きなドッキリなんだ?
でも、なんの為のドッキリだ?
俺を騙したところで誰得?
···千か?